戦場帰り

 

 

向かってくる者を排除して何が悪い。お前のそれはつまらぬ感傷だ。
獣なら躊躇い無く銃器を向けることが出来るだろう。
同じだ。


ミッション終了後、そこかしこに立ち上る煙の中仲間の遺体を探す。ある者は一部分、またある者はバラバラに吹き飛んで痕跡すら残らない。散らばったドッグタグを拾い集めながら彼の声を終わり無く再生する。


自分の立場をわきまえるだけの理性も無くした人間は獣以下だ。


違うのは実力だけじゃない。側に居て初めて思い知った完全無欠の強さ。
彼には迷いがない。必要ない。そもそも、何故思い悩む必要があるかと揶揄し、最後には苛立つのだ。


お前は兵士だろう。
兵はなんの為にある。考えてみろ。死はお前たちのすぐ側にある。それが嫌なら、





初めて人に銃を向けて撃った。もんどりうって倒れたその胸から腹から血が噴き出して俺は初めて武器の選択を誤った事を知った。サブマシンガンは携帯性に優れ素人でも反動少なく撃てるものの、威力は低く軽度の防弾装備も貫通できない。浅く肉を抉った鉛弾が体内で暴れ回り被弾した人間は地獄の苦しみでのたうち回る。意味をなさない叫びが大きく開けた口からほとばしり真っ赤な舌がべろりと垂れた。空気を求めて喘ぐ喉が晒された。
「…すみません」
喉元に突き付けて引き金を引く。暴れ回るマシンガンを押さえてうち続ける。粉々に砕けていく喉頚をぼんやり見つめながら俺は繰り返し繰り返し謝っていた。
「ごめんなさい」
聞こえる筈もない無駄な行為。





「埃だらけだな」
ドアを開けようとしてのろのろと手を伸ばしたのが、其方から開いて反射で下がる。
安い兵士用宿舎の一室に居るべきでない人物が居る。
彼は俺の手の中の金属片を一瞥した。
「報告は聞いた」
「先行隊はほぼ全滅だった」
上官に対する口のききかたではない。
第三者に聞かれれば叱責は免れない無礼。しかし今建物は静まりかえっている。葬送の列が果てしなく続く町の入り口から、ここまで。誰にも呼び止められなかった。
「顔を洗って着替えろ。式はテレビ放送も入る。生き残りをじりじり映すのが宣伝部の好みでな」
「なあ」
放り出したタグが散らばる。四人部屋が今日から俺一人。きっとまた直ぐに埋まる。自嘲の笑みは多分きっと盛大に引きつって見苦しい。
「俺たちは消耗品?」


それが嫌なら、


「早く出世しろ」
実にらしい言葉を残して彼は消えた。
部屋に、僅かに残る彼の残滓。気まぐれに訪れて俺の私物を増やしたり減らしたり。
専用の棚に置かれたアルミの携帯ケース。中身は白い錠剤。

 

 

 

 

 

 

できる前できかけできちゃったらどうしよう(ザックス)?!的場面という設定で
プレゼント攻撃とはまた古風な
きっと減ってるのは下着類だ