「久しぶり」 困ったように笑う、その笑顔は変わらないと思う。 ただ、その目の色が深みを増し、様々な思いを抱えて。きっと内心は複雑。 「元気でいてくれて、嬉しい」 「俺は………お前の敵だ」 「それでもだよ」 少女の時と体型も身長もそう変わりはない。その筈なのに、決定的に違うと感じる。 事情を知ってしまったからだろうか。 その背に負っているものが重すぎるのか。 自分の正体を知って失望しただろう。 「なあ千種」 後ろに控えている数人、その誰もが千種を予断なく見張っていた。 「俺を連れてく?」 「…無論だ」 「考え直す気はない?」 殺気はない。ただ静かなだけ。冷静でいるだけ。 なぜだかそれが癪に障り、千種は苛々とヨーヨーを弄ぶ。 「今なら俺の権限で、ボンゴレに入るって条件付きで………前歴、消せるんだけど」 「断る」 瞬間、茶色の目が泣きそうに歪む。 唇がわななき、ツナは俯いた。泣いてしまうのだろうか。 返答を、少しばかり後悔した。 「テメエ………」 ざり、と靴底で砂を鳴らしながらにじりよってきたのは、ボンゴレに集うマフィアの一人。データによればダイナマイトを使う、獄寺隼人とかいう奴だ。 「10代目はテメーの為にっ………!」 「獄寺くん」 ツナは千種の身柄と引き替えに、ボンゴレを継ぐ事に同意したのだが、そんなことを彼は知る由もない。 (知る必要もない) ツナは顔を上げた。 「…残念、です」 「すまない」 悲しげな視線が交差する。本当は互いを傷つけあいたい訳ではない、今まで通り友人としていられれば、それが何よりなのだと分かっている。そしてそれが決して無理であることも、道は一つにならないことも、先へ進むには、 「お手合わせ、願います」 「ああ」 今ここでぶつかりあうしかないこと。2人は分かっている。
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