「うっきゃああああああ!!」
寮内に響き渡るような悲鳴を上げてツナは起きた。カチ、コチ、時計の音がする。
「………はっ、はっ、はっ」
息が荒くなるほどの………
「夢…?」

呆然とベッドの上で寝癖を跳ねらかしていると、ルームメイトの千種がトレイに朝食を乗せて部屋に入ってきた。
「千種………?」
「どうした」
メニューは目玉焼きと蒸し野菜、ごはんにみそしる。ヨーグルトとプリンが一個ずつのっかって、なんとミカンとリンゴまで。
いつもなら大喜びでたべようたべよういただきますと煩いツナが黙ったまま、大きな目を更に大きくしてはあはあしているので、千種は不審に思ったようだ。
眼鏡を押し上げてもう一度訊く。
「どうしたんだ?」





「………変な夢だな」
「そ、そうだよね………おかしいよね!」
千種が男で、俺も男で、なんだか知らないけど最後には銃だのが出てくる怖い夢だった。
こころもち千種に寄りながら、ツナはもそもそとご飯を食べる。
「薬で性別が変わるなら、こんなに苦労してない」
「まったくだよ………」
「男が、いい。女は面倒だ」
「同じく」
「………ん」
千種は少し笑ったようだった。
その笑顔に励まされ、ツナの食欲が少しずつ戻ってくる。ウマイ、ウマイ。デザートまである、なんて幸せ!

いい気分のままツナは訊いた。
「千種にパイナップルみたいな頭した変態の従兄弟なんていないよなあ!」

途端ピタリと箸をとめてぐっ、と言葉に詰まった。
千種はややあって眼鏡を押し上げる。
「………ツナ」
「なに?」
「い………いや、なんでもない。早く食べよう」

幸いなことに不思議な沈黙について、ツナが気付くことはなかった。