第三の眼
待って………
つれてかないで!
全てが終わったかのような静寂の中で僕はただ一人の声を見つける。相変わらずみっともなく震えてまったく威厳というものが無い。迫力もない。ただ胸を打つ事だけは確かで、きっとあのフライト中出会って君が椅子に座り僕の目を見たその時からずっと一定間隔でノックし続けているのだろう。聞いて、聞いて、訊いて。きっと君は僕が尋ねるのを待っていた。その力を頼る臆病な下衆に成り下がるのを待ち続け、とうとう此処まで来てしまった。すまない。一度だけでも訊いてあげれば、「僕はどうなるのですか、いつ死が訪れるのでしょうか」と口走ってしまえば君は安心して僕を最果ての地へと誘い、永遠の退屈を与えたろう。君は人を傷つける事が嫌いで嫌いで仕方がないのだ。忌むべき弱さだ。けれど不思議に不快でない、それぐらい卑怯な方が君は似合っている。君は力一杯否定するだろう、それともあの悲しげな目で僕を見る?どちらでもいい、僕自身は君があの力に誰よりも相応しい器と思う。そうして怯えて隠れてびくびくしている方がずっといい。そんな君の手を引いていつだって連れ出してやり、安心を与えて僕らの為に力を使うべきだった。代償にこの手が群がる有象無象を排除して差し上げる。君の正体を知ってしまった今では夢でしかないけれど………僕も礼を言っておくべきか? 文章top |