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「あのさあぁぁ!!」
ムキになって怒るツナを、どうにも堪えきれない笑いで伺うコロネロは、最後の肉の一切れを口に収めモグモグやっている。
「で?」
完全に面白がっている口調だ。ナプキンで口を拭うもそこそこにツナは勢い込んで言った。
「そろそろ、どういう事か説明しろよ!今までずっと我慢してたんだぞ」
「だよなァ」

フゥッ、と。
子供らしからぬ憂鬱なため息を吐くと、彼は目の前の皿をよけた。
ツナが立ち上がり、食器を纏めて流しに置いた。使い慣れないコンロを弄って湯を沸かす。夕食を作ったのは二人の共同作業だった。そして、今は美味いお茶が飲みたかった。
あたたかいカップを前にして向かい合い、静まりかえった家の中で更に耳をすます。
ややあってコロネロはテーブルの上に投げ出した腕を頬についた。
「何処まで知りたい?」
「全部、徹底的に、何もかも、だ」
「成る程」
ゴゴゴ。
テーブルの上に肘をついて、勢い込むあまりのしのしと迫ってくるツナをテーブルごと引き離しながら。
「―――俺は、仕事でお前の近所に越したんだ」
「まあ想像はつくねぇ」
「最初は二週間の予定だったが、都合でのびにのびてな………」


コロネロが請け負った仕事は、隣地のビルの監視とあるものの破壊だった。
潜入も数度行っていて、中で行われていた事も進み具合も知っていた。だからこそ、一月という時間をかけて決定した。ツナが眠れず、ひょっこり顔を出したあの日に彼は仕事を完遂し、姿を消すつもりだったのである。

「そ、それじゃお前黙っていなくなるつもりだったのか?!」
「仕事だっつってんだろ…」

今まで仕事上、人と親しくなる事は少なかった。なったとしても軽い顔見知り程度で、しかも皆大人だった。
ツナは、少し若すぎたのだ。
少年の二人連れは目立ってしまった。安否を問うたのは、まわりに少しばかり妙な気配を感じたからだった。何かあれば、巻き込んでしまうことにもなりかねないと。
もうシャレにならないくらい巻き込んでしまってから思い返すもなんだが………

「仕事に関してこれ以上詳しく話すつもりはない」
「あの、俺ン家バターみたいに綺麗にすくってったやつだろ?」
「………黙っとけコラ」

任務後、速やかに姿を消す為の段取りに急遽ツナを加えたため、港を出る訳にはいかなくなった。怪しまれれば、荷も人も調べられる。バスで移動したのはそれが一番リスクが少ないから。バス停に監視カメラは無い。


「ほとぼりが冷めたら母親の所へ戻してやる。彼女の身柄も旅先で確保した」
「ほえっ?!」
「まあ、その事は心配するな。今はただじっとしていればいい」
話は終わったとばかり立ち上がろうとしたコロネロの腕を、ツナがくんと引っ張る。
「………」
「………なんだ」
「まだ、ひとつ、残ってるじゃん」


………


はぁ―――っ………
ものすごく深いため息を吐いて、彼にしてぐんなりと椅子に凭れる。
そんなコロネロの様子を興味津々で、目を大きくして見るツナ。
「忘れてなかったのか」
「俺をなんだと思ってんだ」
「世の中にゃ知らねえ方がいいことだってあるんだぜ」
「知り、たい、の」
一語一句、きっちり発音。
どうあっても逃がさねえ的気合いで腕を引っ張っているツナを、実に嫌そうに眺め。

コロネロはおもむろに床へ置いてあった、ツナが努めて見ないようにしていたものをズルリと引きずり上げた。
それは彼の背丈ほどもある長距離ライフル。
「こっちは予備。使ったのは船。大事なのは弾だ」
なにその暗号?
ツナは突っ込みたかったが、我慢した。ヘソを曲げたら最後絶対教えてくれないだろう。
「あのビル」
「見てたよ。すんげー威力だった。まっぷたつに…」
「普通に撃ったんじゃねえ。………ま、説明しても納得するとは思えんが、俺の力を込めた」
「ちから?」
「気力みたいなモンか。俺はそれを弾丸に込めて打ち出す事が出来る。ただし、チャージ期間が必要で、そうポンポン撃てるモンでもねえ」
「かっ………」
こええ………!
ツナはゲームもマンガも好きだったので、若干目がキラキラした。
「す、すげえなお前!」
「は?」
「そんで、その必殺技を撃つ時はあんなふーに変身すんだろ?なんて言うの?呪文は?」
「呪文?」
「ポーズとか!」
「何の話してるお前。それに、変身て何だ変身って。あれは単純に元のカラダに戻ってるだけだ」
「元のカラダぁ?」

まじまじと見る。
目の前の、金髪碧眼の、少年の細いおとがいがクイと上がった。

「じゃ、つまり………お前、元々は、あっち………」
「力を使うごと、俺は肉体年齢が逆行する」
今回はこれぐらいで済んだがたまに赤ん坊に戻っちまう時もあるんだぜ、などと冗談めかした口調で言っていたが、ツナはもう聞くどころではなくなった。
「も、もし、もしかして………もしかしなくてもお前って結構………」
「ん?」
「トシ、行ってたり、するの?」
「もうすぐ18」
がふっ。ツナは転げた。
自分は今まで同年代―――いや、話を聞くと一つ年上の相手の頭をくしゃくしゃしたり、ゲームで対戦して勝って喜んだり負けて悔しがったりウロウロウロウロしてたわけか。
………はあ。

なんだかとっても疲れて、ツナは椅子にずるずる座り込んだ。


2006.3.31 up


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