パートナー
それから歯を磨いて、布団を敷いて(今では二つ)、オヤスミと言って明かりを消す間。
ずっと「六道骸」はツナを見ていたが、結局何も言わなかったしいつもの攻防も果てていた。最初の3日ぐらいで、どうしても駄目らしいというのを学習したのだ。
ツナは布団に入りながらも目をぱっちりと開けて、隣に横たわる「六道骸」を考えてみた。
いらなくなったっつーなら、それはこっちの台詞だぜ。
俺は断れば廃棄処分になるペットの面倒を見てたつもりだったから。
そうじゃないお前は早く帰ってやらなきゃなんないことが山盛りだ。はやく帰れよ。帰っちまえ。
ツナは目を閉じた。バイトの疲れであっという間に眠気が襲ってきて、後は何も分からなくなった。
綱吉君大丈夫、と言われて気付いた。
規定量の軽く3倍突っ込んだせいで、コーヒー豆が机に山を成していた。
「うわあああっスミマセン!」
あたふたするツナに苦笑して、マスターは辛かったら休んでと言った。この密かに鋭い人がどれだけ読んでいるか掴めず、束の間ツナは凍ったがあまり気にしないことにした。
いいんだけど別に。失恋とか思われても。(ツナは話題を振られて顔面を凍り付かせる分かりやすいリアクションをしてしまっていた)
朝、起きると彼はいなかったから。
きっと自分の場所に帰ったのだろう。
一人納得し、フンフン頷くツナに、マスターは言った。
「何かあったの?」
「厄介者が、減りました」
「嘘」
嘘?
ツナが訝しげな顔でマスターを見ると、いつもののほほんとした面で、ツナの首元を指さす。
「朝、急いでたね。まあ、綱吉君元々こういうの、気付かないたちなんだろうなぁ………」
自然でいいことさと軽い足取りでさりげなくカウンター入り口を開ける。
ツナはダッシュでトイレに言って、洗面台の鏡を見て絶叫した。
「あんんんのばかやろおぉぉぉ!!!!」
おかしいとは思ったのだ。
―――まず起きた時点で全裸だったから。
ツナは鏡を見つめながらプルプルと拳を振るわせた。はっと思ってめくった腹も、もしやと思って下ろしてみた足の内股も、点々とついている虫さされの痕。
もとい。
「あんちくしょ―――!」
ツナは再び絶叫する。絶対、絶対許さねえ。今朝あれだけしんみりして準備して、落ち込んだ(何故かそうだったんだよ!)俺のピュアな気持ち返せって感じだ。
烈火の如くぐつぐつと煮えたぎった状態でツナはバイトを終わらせ、肩を怒らせて部屋に帰ってきた。人気のない部屋で考えられる限りの悪態をついてぐうぐう唸っていると、ピンポーン、お届け物でーす。
「なんですかー!」
もうヤケになってドタドタ出る。迫力に押された配達員が差し出してきたのは大きな封筒だった。
「ご苦労様です!」
ぐりぐりっとサインをなぐり書きして、戻って、座布団の上にドスンと座る。
差出人、なにやら会社の名前。
カタログか何かかと、一応中を見てみることにする。ところが怒りが持続しているせいで余計な力を込めてしまい、勢い良くぶっちゃいた封筒から、
ザザザザ―――ッ
「………」
部屋中に撒き散らされたカラー写真に、ツナの目は半分になった。大写りになった自分の間抜け面のアップ。上半身だけのショット。
極めつけ、全裸。
ツナの目が、据わった。
丁度のタイミングで鳴る携帯に出ると、忌々しいあの声が聞こえてきた!
「如何ですか」
「何が」
「安心してください。僕自ら焼いて、写真屋になんか行ったりしてませんよ?………データは此方にお預かりしています、消して欲しかったら、」
「其処動くなよ!!」
写真を放り出してサンダルをつっかける。聞き覚えのあるピーポ音(丁度窓の外過ぎてった!)とクスクス笑いが聞こえてくる携帯を叩き付けたい衝動に駆られながら外へ出ると、アパートから10メートルも離れていない場所に路駐してる黒塗りのおベンツ様が。
「こらぁぁぁっ!てめえ、色々間違ってんだろ!」
ピカピカの車に寄りかかったまま、にこやかに優雅に手を振っているその顔に―――
とりあえず一発入れてやろうと思ってツナは全力疾走したのだった。
2005.4.14 up
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