「おーいリボーンこの決済………」

ドアを開けるなりすごい光景が飛び込んできた。

「やめろ!寄るな!近づかないでください先輩!!」
「いーじゃねーかかてーこと言うなよ」
刺身醤油とワサビを持ったリボーンが、じりじりと部屋の隅へ向かって移動している。
その角には必死で相棒のタコに身を寄せるスカルの姿があった。
「会う度にそいつが俺を誘惑するんだよ………クククッ」
「い、いかがわしい言い方しないでください」
「その吸盤一つ一つが俺に食ってくれって訴えやがる」
「それは先輩の都合いい妄想!」
「何してるんだリボーン!」
酷いじゃないか!

そう言って飛び出した俺を見たスカルは、

「うわああああ!!!!寄るな触るな近づくな―――ッ!!!!」
前よりももっと激しい声と身振りで拒絶した。
「しっ、しっ、」
「あ酷い」
「酷くなんてあるか!こっち来るなって言ってるだろ!!」



自業自得なのだが、何か釈然としない物を感じる。
俺はそんな、ケダモノじゃないし、どうこうしようなんて思ってない。ただ一緒に茶でも飲もうと思って。
「はあ………」
ため息を吐いてトントンッと書類の角を揃えていると、タコと彼曰く、パシリ?………に逃げられちまったお前のせいだぞツナ、でふくれているリボーンが言った。
「何やったんだアイツに」
「何ってウン、ちょっとな。………ンお?気にしてる?リボーンも結構、後輩思いの所あるんだねえ」
「………アホ」
リボーンには変態呼ばわりされるだろうから言わないでいよう。
実はこの間、うっかり心の声を垂れ流したらこの始末ですよ。
「お前こそさ、相棒さんのタコ食べたがるからスカル逃げちったじゃないか」
「あれは完全にテメー見て逃げたと思うんだが」
「折角一緒にお茶飲もうと思って………」
忙しい合間に「危ないのでどうか部下に言いつけてください10代目ェェ!」って獄寺くんに泣かれながらわざわざイギリスのハロッズ行って紅茶缶ごそーっと
「買ってきたの、に」
「フン」
ぷいっとそっぽを向いてしまう。反抗期かな?
言ったら殺されるから言わないけどな。
「それよかお前」
「ん?」
ぽんっと放り投げられた小さな袋は、和紙で出来ていた。
京都の土産物屋を彷彿とさせるかわいらしい小袋だ。
「ヒバリから、先日な」
「わあ、これ桜湯じゃない?」
感動しきり中の小ビンを取り出す。
桜の花を梅酢と塩で漬け込んだのを、湯に入れて飲むもの。
香りがとてもいいもので、俺はこれが結構好きだ。
「桜桜ってうるせえからだ。あいつにまで気を遣わせるぐらい、テメーはうるさかった」
「だって全然日本帰れてないし、今年も桜の季節逃しちゃったじゃないかよー」
「人の顔見れば言ってた」
「う………」
袋の中には筆で書かれた小さなメモが入っていた。
黒々とした墨の照りと達筆な文字に感心してしまう。ヒバリさんは相変わらず妙な所でエキスパートなので不意打ちでびっくりする。
「これヒバリさん家の桜なんだって。手作りだー…」
「香りがする。花見してーな」
ふっと笑う。
流石のリボーンも、桜湯の情緒に怖い顔は休業。

まったりのんびりできる時間も後少しだろう。
湯飲みに残った桜の塩漬けを眺めながら、気配を伺う。リボーンは既に飲んでしまって、手持ち無沙汰に銃の分解なんぞ始めている。
ああ、完成したらあれで脅されるきっと。想像できる。
その時、コンコンッとノックの音がした。
「なんだ」
リボーンが受け取ったその小さなハコは、手のひらに乗るサイズだった。
此処に来る品物は全部スキャンを通している。念のため、リボーンが最終チェックして慎重に中身を開けるとそれは、
「ホログラムのマシンだね」
「………」
署名を確かめていたリボーンが、「変なモンだったら後でシメる」などと不穏は言葉を吐きながらパチリとスイッチを入れた。

「わあ………!」
「お………」

桜、桜、桜。
部屋中にリアルな桜の映像が現れて、俺は感激の余り湯飲みを膝に落としてしまった。
良かった、全部飲んでて………
「すごい………」
花びらが散る様子も、はらはら雪みたいに落ちる光景も全部、本物ソックリ。
指に触れずに透けて落ちるのが唯一、立体映像だって事を思い出させるぐらい。
「綺麗だね………うっ」
「………ツナ?」
ぎょとしたような顔をするリボーンなんて滅多に見られるもんじゃない。
俺はグズグズ鼻を鳴らしながら笑ってしまった。
「き、きもち悪ィ………」
「はは、は、だってさ。こういうトコあるから可愛いじゃないか。お前と違って」
「………」

泣きながらヘラヘラ笑う俺から距離を置きつつ、リボーンは注意深くスイッチを切った。
ヤバイ。一言余計だった。





脅されるだけでなく顔のすぐ横をばすばす打ち抜かれながら再び俺は必死扱いて書類と格闘する羽目になった。
「サボってんじゃねえよ!甘い顔すりゃすぐつけあがりやがってアホが!」
「ひー!」


2006.4.23 up


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