※ツナが負けちゃった(?)場合



 その瞬間、自分の体はバラバラに吹き飛んでしまったような気がした。
 強い衝撃と共に目が眩み、息が詰まり、吹っ飛ばされて仰向けに転がった。強い一撃は何か異様なものを感じさせた。
 実際その時、ツナのある部分は消えてしまった。殴られて吹っ飛ばされて分離してしまったのだ。彼の身体から黒い靄のようなものが魂ごと抜けていく――恐ろしい光景が皆の目にありありと映った――
(冗談じゃない待ってくれ!)
 ツナは焦りまくった。酷い、こんなくだらない争いで(彼に取っては十分下らなかった!)命まで無くなるなんて非常識だ。死にたくない。
 大体なんだよ、マフィアの10代目ぇ?!ぜっっっったいに嫌だ!

 彼の見苦しいまでの執着が、寸前でそれを引き戻した。
 または『そのもの』がそっくりそのまま抜け出ただけかもしれない。
 とにかく次に皆の目に映ったのは、小さな童がころころと地面を転がり、そのままの流れで器用に膝を抱えてびいびい泣き出している所だった。

「勝負あったな」
 ライカンスロープの変身を解いたザンザスが、さも当たり前であるかのように宣言した。
 途端、空から子供の頭ほどもあろうかという石が降ってきた。ゴン。

「「「……」」」

 異様な光景に、ツナの陣営も、ザンザスの部下も、ぽかんとしている。
「???」
 たんこぶの出来た頭をさすりながらザンザスが周囲や上を見渡すが、其処には満天の星空が広がっているだけだった。
 気を取り直して――
 情け容赦のないザンザスが、ツナにトドメをさそうと一歩を踏みだした時だ。
 今度は大人の頭ぐらいの結構大きな石が、やっぱり彼の頭の上に落ちてきた。ゴイーン。

「うう……グス」
 ツナはまだ膝を抱えて涙を零しているが、大方泣き声は収まってきた。
 ザンザスを伺うように見る目。男の中で何かがプッツン切れた。
「……ってぇじゃねーか」
「っ!!」
 動物的な第六感で、ザンザスはこれがツナの仕業と読んだらしい。くわと歯を向いて更に脅す。
「ふざけてんじゃねえテメエこの」
「ひっ」

 突如ものすごい突風に煽られ、数十メートル先の立て看板が吹っ飛んできて、それは一歩を踏みだしていたザンザスに正面からぶち当たった。
 看板は縦2.5メートル、横3メートルのかなり大きな物だったため、流石のザンザスも足を崩した。
 しかしさすがはライカンスロープである。
 なんとか持ちこたえてしまう。すごい。
「テメエエエエエエ!!!!」
「うわあん!」





 一部始終を見ていたリボーンがポツリと言った。
「幸運の塊みたいな奴に喧嘩売ろうってのが土台、間違ってるよな」
 続いて興奮しきった獄寺が、己の熱意のままにぶちあげる。
「流石ッス……!やはりボンゴレの10代目は沢田さんをおいて他ありませ――ぐはぁっ!」
 途端彼の後ろ頭を強打した物体は重い土の入った巨大な植木鉢。
 しゃくりあげつつ物悲しげな視線が不穏な発言をした獄寺の顔に注がれていたが、既に意識が闇に沈んでいた彼は気付くことなく地面に倒れ込んだ。
 その数メートル先には"自然現象による私傷"にまみれたザンザスが、気絶し倒れ伏していた。


2007.4.24 up


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