まるで映画のワンシーンのよう。金髪美形ハンサムリッチに横抱きにされ、持ち運ばれる。歩こうとすると「体に障る」と止められる。
いい加減足が退化して蛇か鯨になってしまいそうだ。
それぐらい自分で出来ますよと言えば、返ってくるのは。
「ツナ。お前は大事な体なんだ」
「あははははは」
もう笑うしかない。
助けを求める意味で周りを取り囲む強面のおっさんたちを見ると、異様にあたたかい眼差しで微笑まれ、鉄壁のガード!と言わんばかり幾重にも重ねられた黒スーツの壁。
俺人生選択間違ったみたい。
今更ながらツナは実感していた。ディーノならば、昔からリボーンの無茶に一緒に振り回され続けてきた彼ならば!今回のこの異常事態を良い方に持っていってくれるのではないかと思ったのだが、とんだ見込み違いだった。
もーね、ほんとね、カンベンしてくださいで笑っちゃうでしょ?
ご迷惑だとは思いますがあの暴君の気がおさまるまである程度、避難させて頂けないでしょうか。ほとぼりが冷めた頃自分チ帰りますから………
丁寧に申し出たツナに、相手は開口一番こう言った。
「俺は俺の全てをかけてお前を幸せにすると誓う」
そして手を取り、甲にキスをし、とろけるような笑みを浮かべて更にトドメをさした。
「愛してる」
………うそん。
「正気に戻ってくださいディーノさんおりゃー!!!!!」
ツナは願いを込めばこーんとかなり強めに頬を殴った。
しかし返ってきたのは罵声でも「はっ俺は何をしていたんだ?!」というお約束な反応でもなく、
「つ………」
痛そうにしながらどこかうっとりした顔で此方を見つめる熱い視線だった。
「ツナ………お前、いい拳持ってんじゃねーか………」
「マジで戻ってきてェェェ!!夢なら覚めてェェェェ―――!」
困ったことに、この夢は、まったく覚める気配がない。
暇さえあればキスと抱擁を惜しまない兄弟子の濃厚なスキンシップに民族の違いを感じつつ、時折本気で窓から身を投げたくなる。自分が情けなくて。
男の片腕が一回りしてもまだ余る腹(内臓でふくれてぽっこりしている…)。
掴まれると良く思い知る、指の小ささ細さ頼りなさ。
手も腕も全てがそうだ。
「うんざりだ………」
独り言を、相手は聞き逃してくれなかったようだ。悲しそうな顔になり、慌ててそうではないと言い訳をする。
「ディーノさんがじゃなくてええとその」
「俺を嫌いなんじゃないんだな?」
「嫌いになんてなるわけないじゃないですかハハやだなー」
「嬉しい」
ギャッまただ!
ぎうーと締められるような抱擁の後顔中にふってくるキスにガチガチに硬直しながら、どうやったらあの時あの場所あの選択に戻れるかをツナは必至で模索している(どうせ無駄なのに)。
まあ、それでも彼を嫌いになれる訳はないのだが。
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