C.P
初めて会った人間の反応は様々だが、その根元の感情は一つだ。
つまり、恐怖である。そしてザンザスはそんなものに慣れっこになっているし、自分で故意にそう差し向けている部分もある。
綱吉の反応はそのどれとも違った。まず、動じなかったのだ。
「新人くん」
「やめろ」
「名前教えてくれたら呼ぶよ」
憮然とした顔で綱吉を睨み付けたが、そもそも綱吉はザンザスを見てすら居ない。
渋々名前を言えば、開口一番こう言った。
「ザンザスって言いにくいねぇ」
「喧嘩売ってんのか?」
「ザンザス、何座?」
は?
凍り付いたザンザスをその時やっと一瞥し、綱吉は相変わらずのんびりした口調で言った。
「星座だよ星座」
「そんなもん知るかよ」
「何月生まれ?」
「………」
「俺天秤なんだよ。今日は今月最悪のアンラッキーデーだそうだあ」
「………何が言いてぇ」
「この災難を回避する為のアイテムはパワーボートかシルクのリボンだって………マジで」
ザンザスはそろそろこれはキレ時だろうかと綱吉を伺ったが、相変わらずその目は雑誌に釘付けだ。
「パワーボートを操縦する度胸は無いしっていうか死ぬし。よし」
ざかっと立ち上がると、綱吉は拳を握って言った。
「出るぞー。シルクのリボンは何処に売ってると思う?」
「知ったこっちゃねえよ!」
沢田綱吉と言う名前は一般市民にはそんなに、知れ渡っていないかも知れない。
しかしシティでも警察関係、政治家等は良くその名を記憶している筈だ。名を出せば、あああの優秀な刑事さんね、という事になる。理由はその手柄の多さにある。
そしてシティの裏と裏になれば、あん畜生と呼ばれる訳だ。
しかしその"あん畜生"にも様々な意味があり、複雑な感情が絡み合っている。常ならば警察を政府の犬と言って憚らない彼等も、ツナヨシという名前を聞けば珍妙な顔をするだろう。
彼自身はなんの変哲もない公務員であると自分を評する。
今こうして、ハンドルを握っている間も、その評価は間違いないとザンザスは判断している。
しかし一度事件が起きれば、その行動力は驚嘆すべきものだった。現場に赴き、ふんふんと説明を聞き、鑑識に砕けた挨拶を残してふらふらと出ていく。よれたネクタイと安物のコート姿のまま、何処とも定まらずシティを徘徊した挙げ句、きっちり成果を上げてくるのだ。
相棒として強制的に付き合わされていた間も、彼が何処へ何をしに行くのかさっぱり分からなかった。
点と点。
終わってみればそれらはみな見事な線で繋がれていた。
ただ、問題があるとすれば。
「あそこの彼ね。話聞きたいなぁ。ちょっと軽く脅しつけてくれない?」
人使いが荒い。
「いや助かるね。どうも俺の顔、刑事らしい迫力に欠けるみたいで」
「ああ」
「こういうときだけいい返事だよオイ」
2006.8.1 up
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