C.P
「俺とお前の受け持ち担当は此処だ」
「ふざけるなよ」
休日、家族連れで賑わう遊園地、入り口からすぐのベンチに座った二人は完全に浮いていた。
「なんで?子供さんがいっぱいだ。事件はいつ起こるか分からない。あ起こった」
丁度二人の目の前で、子供が入場5分で迷子になっている。
立ち上がり、わんわん泣いている子供に優しく話しかけた綱吉は案内所のお姉さんに愛想良く声をかけた。
「ただいまー」
戻ってくる頃には飲み物とスナック菓子を持っている。
「どうせだからエンジョイしよ。フリーパスも買ってきた」
「アホか俺は帰る」
「逃がさないよ。今日一日は此処に居て貰う」
場違いに鋭い目つきをして綱吉は相棒の腕を引いた。
署員全員に不思議がられる現象は、どんな強面も暴れん坊も綱吉に腕を保護者みたいに引かれると、黙ってついていくというものだ。
ザンザスも例外ではない。
「今日は少しじっくり話をしよう。良かったらお前の家庭の事情とか、ほじくり返そう」
「あんだと?」
「マフィアの御曹司がなんでサツなんか入ってきた」
小さなミニSL(煙は出ない)の列に並びながら、綱吉はシリアスな声を出した。
周りの子供達が大きな口を開けて大きな後輩を眺めているが、綱吉がにこにこ手を振るとにこにこして手を振り返す。
子供の適応能力は素晴らしい。
ミニSLの一番後ろに乗りながら、ぽっぽーと響くウソ汽笛の音にかき消されながら、綱吉の声は続いている。
「手入れなんか行けるか馬鹿。お仲間がじゃんじゃんブタ箱に放り込まれるの、目の前で見てられるのかよ?」
「ああ」
「なんだって?」
「楽しく見物してやるぜ」
「お前が楽しかろうが向こうは全然楽しくないぞ。見咎められて騒がれるのは必須、今まで暴動が起きなかったのが不思議なくらいだなんなんだお前意味がわからない」
「下っ端が俺の顔なんか知るか」
「悪のエリートみたいなモンか?俺はあんまり詳しくない、良かったら教えてくれ」
「刑事だろう」
「噂程度にしか聞きかじってない。チンピラなら扱わんでもないが、そんな大がかりなのは映画の中でしか見た事ないし」
「はっ………」
SLは終わりに近づいている。トンネルを抜け、笑顔でカメラを向ける親の団体が凍った。
一番後ろに得体の知れない大男と得体の知れない小男の組み合わせがあったからだ。
どちらもこの陽気にコートなど着て、怪しい事この上ない。二人ともが形から入るタイプだったのが災いした。
「アレか、偉い人はやっぱり葉巻と長毛種の猫を欠かさないもんなのか」
「んなわけねえだろ」
「ダブルのスーツで黒革椅子にふんぞりかえって、足の間にキレーなネーチャンが顔埋めてんだよな」
「いい加減にしろ」
「お前の狙いが分からない。こんな小さな街、お前達になんの利も無いぜ」
「オレは正直、何処でも構わねェ。ジジイはこだわってる。此処に何かあんだろう」
「おじいさん?」
「オヤジだ」
綱吉は後ろを見るなり蜘蛛の子を散らすように逃げていく子供達に習い、ミニSLを下車した。
「お前と話してると、何かデジャウを感じるんだよね。家出した16、7のガキを宥めてるみたいな」
「………」
「未だに反抗期かよ、まいったなあ。お守りはごめんだ」
ガッと首元を掴まれて、綱吉は目をぱちくりさせる。
「なに?」
「―――殺す」
「冗談。勘弁してよ。それにお前はもうカタギに足突っ込んでんだから」
「知った事か」
ギリ、と力を込められる。
綱吉は目を閉じ、クッと息を詰めた。血の気の薄い頬に赤みが差し、直ぐに真っ赤になる。
口端がついと上がった。何事か呟くと、体の力を抜く。
まるで進んで手にかかろうとしているようだ。
「………本気で締めるなよ」
「うるせえ」
「痕ついちゃった。変な趣味がある人みたい」
しきりに首を擦る綱吉の視線は鏡越しに、後ろに立つ相棒の憮然とした表情に向けられた。
「結論、反抗期でいい?報告しちゃうよ」
「勝手にしろ…」
2006.8.2 up
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