その日俺の元へ届いた第一報は、獄寺くんが帰ってこないというものだった。
彼には数日前から嫌な気配のする仕事を追って貰っており、勿論信用しないわけではないけれど、嫌な予感がワンサカしてた。
俺はその日の午前中ずっと部下に指示を出しながら、血気にはやり突撃だー!とか叫んでるのを落ち着かんかお前とピシャリやりながら、本当は一番自分が熱かった。
何したらいい?
今からファミリー全員集めて獄寺くん救出作戦を展開する?
でもその案は客観的に見てあんまりいいものではなかった。というか、問題外だった。
俺はまんべんなく指示を出しながら待ち続け、ようやく午後になってひとつ、彼は捕まっているのではなく自ら其処へ赴いたという情報が入ってきた。
まずいな。
伺うようにリボーンを見ると、じっとして動かない。
だから俺も慌てるのを止めて(少なくとも外見はその努力をして)クールに、ご苦労、と言う。内心は震えが来るほど不安だってのに。
夕方になり、夜になり、偽の情報ばかり入ってくるのにいい加減イライラしてストレスでおかしくなりそうだと必死でリボーンに目で合図していたら、ようやく彼は帰ってきた。

血まみれで。

すみませんとまず謝る。そして獄寺くん、説明する。その間もダラダラ鼻血やら口が切れてるのから血が。血に染まったハンカチで拭い、それから手や顔を洗う―――だけで手当は断った。口元が赤くなっている。後で腫れるかもしれない。痛そうだ。
彼はその場でみんなで居るとこで今回のことを言ったが俺は多分殆ど聞いていなかった。
側に化学工場があったのでダイナマイトが使えず素手で7人と殴り合ったそうだ。つれてった部下が早々にノビちゃったので、彼はカンカンに怒っていた。銃にばっか頼りやがってと元気に怒鳴っていた。
「大きな怪我はないのか?」
「はい、無事です10代目」
「良かった……よ…」
俺はというと。
ほっとした。めちゃくちゃ安心した。で。
血まみれの獄寺くんを見た瞬間体がまるで炭酸にブチ込まれたみたいにシュワーっとなって、ゾワゾワして、どうしようもなくなっていた。こいつぁ殆ど返り血なんでーとごつい指輪をいっぱいつけた手をひらひらさせる間も、鼻から血を出しながらへら〜っと笑っているのも、彼が今ここに帰ってきたのも、全部俺の中の何かスイッチを押してしまったに違いない。
俺は慎重に近づき、獄寺くんの肩を抱いた。背中に手を置いてそっと叩き、良く無事で帰ってきた、と言う間もずっとゾクゾクは止まらなかった。やべー、これどーしよー俺病気かな。ふっと意識が遠くなりかける。
「10代目?!」
俺がぐったりしてしまった。
獄寺くんは自分はそっちのけで大慌てして俺を半分担ぎ上げて、周りのみんなは良かったですねとやたら温かい目線で見ているではないか。
まだ年若いボスが、情の厚いボスが、部下の無事を知って気が抜けた………とでも思ってくれているなら感謝だけど。単純に体に力が入らなくて軟体動物みたいになっている。
獄寺くんはというと、もう自分の怪我とか鼻血の事は忘れてしまったみたいで(鼻血は大分止まっていた)俺の部屋にどかーんと体当たりで飛び込んだ。続けて入ってきたリボーンは変な顔して俺の事を見ていたけど、いきなり露骨に顔をしかめて嫌ァな表情を作り、獄寺鍵しめておけとかちゃんと傷の手当てしろよとか言ってそのまま部屋を出てしまった。
「10代目大丈夫ですか!」
獄寺くんは血まみれのまま俺を支えて顔色をうかがっていたが、ふと真顔になって、次の瞬間戸惑った。あの、とか小さく呟く声が耳元でする。
俺も実は………薄々気付いてるんだよね。なんてったって、下半身密着してるから。俺の股間ピッタリ獄寺くんの右足にあたってる。

おかしいだろうか。おかしいな!
俺ってそういう趣味でもあったのか………
血だらけのこの人を見ていたら、もうどうしようもないくらい欲情しちゃって大変なことに。
「獄寺くん…その、ごめんなんでかなあ………」
「いえ………」
呆然としている俺を静かに下ろし、獄寺くんは立ち上がった。スタスタと長い足を駆使して扉の前まで行って、鍵を閉める。
窓を閉める。
確認する。
しつこいくらいに。ガタガタガタ。
無言で戻ってきて、唐突に床の上に膝を着く。
「10代目」
「は、はい」
「失礼しますっ!」
がばぁ、と土下座をしたかと思うと、片膝をベッドに上に乗り上げた。その勢いに思わず俺がタジタジだ。けど、タジタジしてる場合でもない。自分から何かしないと。
獄寺くんがサイドチェストの引き出しを開ける。中にはこの間使ってそのまま放置してある中身の減ったゼリーと、一つしか使ってないゴムが入っていて、実はその奥にあの得体の知れないものやら大人のおもちゃやらが入った紙袋が突っ込んである。
幸いなことに獄寺くんはゼリーとゴムだけ使うことにしたようだった。二つをひっつかむと、それはもう男らしく血とかで汚れた上着をばさあと脱ぎ捨てる。
中のシャツにも血が染みている。ボタンを外して恐る恐る見るが、殴られたような跡は無い。
「奴ら、上ばっか狙ってきやがって。素人のバカばっかりッスよ」
「痛いところは?」
「ないです」
プロは内蔵を痛めつける。目立たないよう服で隠れる所ばかりを狙う。
見た目に分かる顔を狙ったのは………まあ気持ちは分からないでもないけどね。
俺は獄寺くんの、血を垂らしてもワイルドで片付けられる整った顔立ちを見る。思わず苦笑いだ。




たっぷり手に絞り出したゼリーを後ろにあてがわれて俺は息をのむ。冷たい感触に背筋が震えるけど、それ以上に興奮している。体ばかり先へ行っていて俺自身は何がどうなってるのかさっぱり分からないんだけど、とにかく獄寺くんが原因なのは分かる。
この間とは全然違う。
指が潜り込んできても、奥まで入ってきても、体はそれを吐き出そうとはしなかった。異物感は変わらないまま、でもぐんなりした柔らかさが指を受け入れる。
ゼリーのぬめりに助けられながらぐちょぐちょと射し入れられる指の形がはっきり分かる。気持ち悪いだの痛いだのしか感じなかった前回。今は背筋のゾクゾクが止まらなく、酷くなり、指が2本になっても、それをのんだ。頭がくらくらする。
「はぁ、あ、あ―――」
なんだ、この声。
びっくりする程ふぬけた声が喉からぐるると漏れる。指が、指、奥、そこ、ああ。
「気持ち、いっ…」
指が通る度声を出さずにはいられない場所があって、俺の反応はあからさまだ。獄寺くんはそこばかり狙って擦るようになり、ますます強い。今にも弾けそうに膨らんだ前を押さえながら俺は言った。
「いい、いいから、う、ンッ………」
明らかに彼は戸惑っている。この間とはあまりにも違いすぎる。
三倍速で気持ちよくなってしまった俺において行かれてどうしたらいいのか困ってる。
それでもゼリーまみれの手で拙くゴムをつけようとしていたので、俺は焦れったくなって唸った。
「はぁ、や………いらなっ…い」
いいだろ、いいんだろ、別に死にゃしない。
ぷちゅっと音がしてずるーっと入ってくる獄寺くんの肩に俺は必死で齧り付いている。これででもぉ〜とかグズグズされたら早くしろよと怒鳴るところだった。
「ひぃ、ん」
苦しいけど、まだ奥まできてない。ぎゅうぎゅうとサルの子供みたいに抱きつく力を強くして、思いっきり息を吸う。獄寺くんのいい匂い、煙草の匂い、ほこりっぽい、それから血の。
獄寺くん、の。
「痛い…?」
口元が傷ついて血が滲んでいる。痛々しい。きれい。
10代目、と囁くような静かな声がしてぎゅうっとされる間も俺はそればかり見ていた。大丈夫です、平気です、痛くなんか、と必死で言う彼のその言葉よりもなぜだろう、痛いと喚く声が聞きたい。泣いたりなんかしてほしい。
想像するだけでぐっと下半身が熱くなった。絶妙のタイミングでずるんと中を擦った。俺はがくんと後ろにのけぞってびくんびくんしながら吐き出した。早い!すぎる。でもいいや、気持ちいいから。
俺がイッても獄寺くんはまだ。息をはあはあしてまだ落ち着いてない体をずくずく突いてくる。ゼリーだけじゃない、力の抜けたからか、滑りがいい。あ、また、気持ちいい。
「ぁう、く………ん」
ぎゅっと眉を寄せた獄寺くんの顔のアップが目の前に。そして、どろおと俺の腹の中に流れ、あふれ出す感触。
なまあたたかくてどろりとして、それがあまりにも強烈な感覚だったもので俺はびっくりして目を見開いた。
「あっ、あ、あ―――っ」
全然限界なんかじゃなかったのに、つられるようにして俺も漏らす。出すというよりとろとろと先端からこぼれるみたいな射精、根本がじっとり濡れていく。
ぜえぜえ荒い息を吐きながら俺達は重なり合って倒れ、じっとしていた。
それからまた少し、動いた。
そうなんだ俺達は我慢する理由がない。

2005.9.13 up


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