帰国していた山本がおみやげをわんさと買ってきた。中でも目をむいたのがどうやって税関通ったんだと思うくらい大量の酒、酒、酒。
日本酒と焼酎、口当たりの良い軽い果実酒などではなく塩を舐めて楽しむようなごっつい硬派の酒ばかり。
当然のようにその夜は宴会になってしまった。
「ツナ、こっちー」
「はいはいグラスね」
「いいじゃんそんなの。座れよ」
「そういう訳にもいかないから………」
大学の時居酒屋でバイトなんぞしていたせいで、俺はこうした席になると飲むより給仕にまわってしまう。いつもだとそろそろ獄寺くんあたりが異議を唱えるのだが、マアこのメンバーだと誰も聞いちゃいませんから。
「沢田綱吉、僕の杯が空だ」
「ちょっと待ってくださいねー」
何故か人をフルネームで呼ぶヒバリさん。獄寺くんの抗議の声を酒瓶で塞いでいる山本、酔っぱらって壁を殴っているのは了平さんだ。(だからここの壁は特注品)多分あと3秒で寝る。で、奥にリボーンが足を組んでスイスイ瓶を空にしているし、その隣同じような超ハイペースで飲んでいるディーノさん。いつの間にかテーブルの上に立ち、ぐるりと周囲を見渡してワクワクとランキングブックを取り出しているフゥ太………
俺はそんなガバガバ飲む趣味はなくて、給仕の合間にジュースやら生の果物を使ってサワーとかチューハイを(これもバイトの経験)調合。甘さで味を消すのが勿体ないくらいイイ酒なんだけど、残念ながらストレートで飲めるほど俺は強くないのだ。
「ゴバゴブゴベバブ」
「や………山本そろそろ」
「いやおもしれー程入んのなー獄寺」
此処にいる人達は了平さんをのぞいてみんな底なしのザルなので、大分飲んでいるはずの山本もけろりとしている。しかしそのおふざけに付き合わされて一気に入れられてる獄寺くん………彼も相当に強い。俺は、彼が酔っぱらった所を見たことがないから。
しかし今のはどうか。
人としての許容を軽く越えているような気がひしひしとするよ。ブルル。
「ぶはぁっ」
ようやく山本の腕を外して息を付いた獄寺くんは、しばらくむせこんでいた。かわいそうに。

「ツーナ」
「ん?」
山本がニコニコしながら手招きしている。俺はのこのこと側に寄り、わしっと大きな手に頭を掴まれる。
ちゅう、と軽い音がして、口に柔らかい感触。
「山本………あのね………」
これ余所様に行ってもやってんじゃないよね?!
酔うとキス魔になるのだと公言してはばからない山本が、やはり酔う事は滅多にない………らしいんだけど、みんなでワイワイのむ時はしょっちゅう酔っぱらってこんな風だよ困ったもんだよ。
「山本テメェ―――ッッ!!」
「ははははは」
「獄寺くん、落ち着いて。山本、気は済んだかい?」
ふざけてんのに、いちいち付き合ってらんないよ。
俺は獄寺くんをなだめ、山本を窘めながら立ち上がる。空いたグラスを持って早くしなよと催促するヒバリさんに瓶ごと渡しておく為に。
「はいお待たせしました………む」
………酔っぱらい第二弾か。
山本よりは若干心臓に悪い相手だが、ギャアアという気持ちにはならない。ヒバリさんもまた、チョッカイを出すのが好きな人種だ。つついたり、つねったり、どついたり(痛い!)、その延長線上だと思えば。
「ごちそうさま」
「いーえとんでもない。おそまつさまでした」
「………僕が?」
「それこそとんでもないです」
俺です俺。睨まないでくださいうなされて眠れなくなるから。
「ツナーッ」
「はーい」
殆ど宴会主のオヤジのようなノリで俺を呼びつけたディーノさんは、超至近距離でニカーッと笑った。
ちぇっ、相変わらずかっこいいなあ。
俺もマフィアのボスになったら一晩にして変身するんじゃないかと淡い期待を抱いていたけど、全然そんなことなかったっけ………
「おれもおれも」
「はいどうぞー」
しかし、つくづく頭のおかしい人達だ。
酔っぱらったおふざけなら、頬とかにすればいいのに。わざわざ口くっつけなくったって、気持ち悪くないのか?
「ツナ兄、ボクにもちょーだい」
「フゥ太、お前はこんなお兄さん達を見習っちゃ駄目だぞ」
「見習ってるわけじゃないよ。ボクがしたいんだよ!」
それはそれで問題だな、ウン。

一部始終を眺めていたリボーンが、最後につきあってらんねぇぜとばかり肩をすくめ、天井を仰ぐ。
その下には取り押さえられてもがく獄寺くんがいた。さすがリボーン先生。
「ふんぐ―――ッ!」

2005.9.15 up


next

文章top