ヒバリとカメ

 

「うぎゃああああ」
風紀委員長ヒバリが海岸を 獲物がいないかどうか探索 散歩していると、いきなりバイオレンスな悲鳴が聞こえてきました。
ヒバリは大物の予感に胸をワクワクさせて現場に駆けつけました。すると、一匹の鈍くさそうなカメを寄ってたかっていじめている群れた草食動物達がいます。
「ひぎゃああああ」
「やーいダメツナー」
「ノロガメー」
内容は割とどうでもいい罵りに、カメは案外強かに「カメって動物は元々鈍いんだよ!」などと反論ツッコミしていましたが、「ダメツナの癖に生意気だぞう」と某猫型未来ロボット名作の主人公のような扱いを受けてヒイヒイ泣いていました。
「僕の前で群れるんじゃない」
早速ヒバリは愛用のトンファーでカメをいじめていた輩をめった打ちにしました。最初こそノロマのカメ相手にブイブイ言わせていた彼等でしたが、数十秒後には断末魔の痙攣でピクピクしていることとなりました。
「あーすっきりした」
実に非道な言葉を吐いて、凄惨な笑みを浮かべるヒバリ。
「待って………待ってください」
機嫌良く帰っていこうとした後ろから、弱々しい声がします。ヒバリはめんどくさそうに振り向いて、声のする方を睨み付けました。すると、先ほどまでいじめられていたカメがのっそり起きあがって、のたのたと砂浜を這って追ってきました。
「なんか用?」
「ありがとうございました、通りすがりのお方。俺はこの近海に住むカメで、つなよしと言います」
「ふん」
「あのう………助けてくださったお礼をしたいんです、けど。これ俺の名刺です」
カメはごそごそと甲羅の裏を探り、一枚の貝殻を取り出しました。見てみると『竜宮城城主乙姫専用27号機綱吉』と書かれています。
「竜宮城………?」
「俺の仕事場です」
「乙姫専用27号機?」
「乙姫様をお乗せするのが俺の仕事なんで。あ、乙姫様っていうのはですね、それはもう大層美しい方でその名を京子さまと仰るのですが」
カメは調子にのって乙姫の美しさについて延々語りましたが、ヒバリは殆ど聞いていませんでした。
彼はこの、会ったばかりのノロマなカメが知ったこっちゃ無い女の話をべらべらするのが大変に気に入らず、イライラし、ついにそのカメを手で突きコロリと仰向けに転がしました。
「髪には兄の了平さまが魔物クラーケンと一騎打ちして手に入れたとゆー珊瑚の飾りを………ってなにすんですか!」
「うるさい。お前は今から僕の専用機になるんだ」
「はあああ?!?ちょっ、何勝手に決めてん」
「黙れ、噛み殺すよ」
殺気立つ危険人物にツナは両手で口を塞ぎ、ガクガクと頷きました。
陸は恐ろしいところだ。暇人に追いかけられるし、いじめられるし、助けてくれたと思った通りすがりの男は自分の腹の上に足をデンと置いて殺すとか言ってる。
悪夢だ。夢なら覚めてくれ!
カメは震えながらありもしない目覚めを切に願いましたが、無論それがかなえられることはなく―――
「んぎゃあ!いいいいったいなにを」



(現在海岸では著しく風紀が乱れる光景が繰り広げられております。コトの終了次第、速やかに音声と画像を回復致しますのでしばらくお待ち下さい)



「うっうっうっ」
「お前は僕だけ乗せていればいいんだよ」
風紀委員長の癖に散々風紀を乱し終えたヒバリは、裸に剥かれてアレコレされてメソメソと泣いているカメを俵のように担いで意気揚々とねぐらに帰りました。
カメのつなよしはノロマだったので逃げられず、それからはヒバリ専用機として暮らすことになってしまいました。
めでたし、めでたし。


2005.9.26 up


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