この吐き気をのみこんでしまえば

 

―――時間の感覚が鈍っている。
随分長い間暗い場所に居る。………訂正。暗い部屋に居る。俺の部屋。仕事場は向こう。此処は寝室。
隣に寝息。
起きたいが起きられない。しっかり体に巻き付いた腕があまりにも強いせい、もしくは俺自身が弱すぎる。
多分後者。

そろそろうんざりしてきたところで、枕元の時計を見る。6時………15分を回った、けど、一体今は何時だ?朝の6時か昼の6時か区別が付かないから困ったものだ。
「………まだ」
寝息はいつの間にか止んでいた。掠れた声が耳元でして、長い腕が伸びて時計が軽い音を立てて倒れ床に落ちる。背中にべったり張り付いた体温がまた熱くなっていて泣きそうだ。重い。
なお悪いことに敷いてあるカーペットの柔らかさといったら毛皮のコート並みで音がしない。
だから言いつけ通り誰もこない。





「テメェの仕事はただ一つ、足止めだ」
「どうやって。縛って転がして置くわけにはいかないし、言うことだって聞かないよ」
「縄は解いていい。説得も無用だ意味ねェからな」
「足でも折るの」
「使い物にならなくなったら後々困る」
「じゃあどうしろって………」
「なにもするな」


今なら意味が分かる。確かに俺は何をする必要もなかった。というか、何をしてもいけなかった。抵抗するなと釘を刺されていたから。
「求めることにはなんでも応えてやれ」とリボーンに言われていたからだ。
意味ありげにこれはお前にしかできないと囁かれた意味を、俺はようやく理解していた。

最初の晩はただ振り回されただけだった。
何がなんだかわからないうちに始まって、終わった。最初は驚いたのと混乱でガチガチだったカラダをこの人は異常な熱心さでもって崩しにかかり、俺はまんまとそれに落ちたというわけで。
惜しげもなく強烈な快感を与えた後二度目は、焦らすような、苛々する責め方を延々と。
三度目以降俺は文字通り腰を上げ、下ろした。
やってみろと言われたので教えられたとおりにしただけだ。鞭や銃や、その他ボスとしてのなにもかもを教えてくれたあの優しい口調で彼は辛抱強く俺が動くのを待ち、すれば褒めた。笑顔を浮かべ、下から容赦なく突き上げて褒美だと言った。

それが要るのか要らないのかなんて俺に分かるわけない。





「足音、しません?」
「気のせいだろ……なあ」
またですかという言葉を飲み込んで俺は言いつけに忠実だ、だって全て指示通りにすれば間違いない。
ぐるりと体を裏返して腕を伸ばす。彼は目を細めて満足そうに笑っている。


2005.10.6 up


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