Happy Life?
狭っちい部屋………などと聞こえてきた言葉に文句を言う元気もない。
結局会社の待合室に張り込まれた為逃げる事も出来ず、嫌だ駄目だと断る気概も無く、(だって怖いんだもん)引っ越してから2週間一向に片づく気配の無い部屋に入り込まれた。
茶、飲んだら帰ってくれ………
心からツナはそう願っているが、男はさも当然という顔をしてソファー代わりのベッドにふんぞりかえっている。
びくびくと距離を置いて、捕まえられないよう身を引きながら台所へ飛び込んだ。湯を沸かしている間もああクソ、どうして窓の少ない物件を選んだんだろうそもそも3階ってのも間違いだった1階だったら窓越えて逃げられたのに………と後悔しきりである。
「仕事………暇なのか?」
「お前は忙しそうだなコラ」
「う、うん」
ガサガサとポットに突っ込んだ茶葉が零れる。
日本人向けのスーパーで買った緑茶だが、ウンと濃くしてやるとかろくでもないことを考えているツナは、相手が相当日本語が達者だとか滅茶苦茶苦いエスプレッソを好いているとかいう事実を認識していなかった。ヤケになったように突っ込む。
「しばらくはない」
「へっ?」
驚くほど近い場所で声が聞こえて硬直する。背にぴたりと合わさった体温が、べったりと寄りかかって重い。重すぎる。
「うぐぐ」
シンクに押しつけられながらやかんに手を伸ばす。なんとしても茶をいれ、それから帰って貰わないと―――思う片っ端からブツブツ思考を切り払っていく手が、声が。
(耳元で喋るな………!)
ぞわりと背筋を振るわせる感覚であの密林の夜に戻っていく。
考えないようにしてたのに。
あんなことなんでもないって言い聞かせてたのに。思い出させるな。
「い―――今更会社勤め、なんてさ。慣れないんだけど、まあ仕事だし」
声を張り上げる。
「最近慣れてきたらまあこんなもんかなあって」
ふうっと息を吐かれて足が崩れかけた。
「俺より若い子がバリバリ営業してんの見ると!すげえなって思うんだけどっていうかなああああ!!!」
「何」
ぐるんと振り返って間近にある蒼を睨み付ける。
「疲れるから嫌だ!」
正直に行こう、そう思ったのだ。
「俺30だし!体力、無いし!っていうか30だし」
「だから?」
ああああああ。通じない。
近づいてこようとした唇を再び身を回してかわす。もう、何が何でも。
「そもそも………あんたの、トシも名前も知らないんだ俺」
「17」
………
………
………
「………っは?!?!!」
「ン」
「10代?」
「ああ」
ツナは状況も忘れて目の前の顔をまじまじまじと見続けた。17?これが。ウソだろ?
「でかっ!!」
「そうか?そうでもねえだろ。もっと大きい奴なんてザラにいるぜ」
「いやそれ比べる対象が一般と違うだろ!っつかもう、いいよ!お………おま、さっきの店戻って来いッ………」
「はあ?」
こんなことなら青少年の心配なんてせずに気を利かせてさっさと自分だけ抜けてくれば良かったんだ………!
後悔してももう遅い。てっきり、20代も半分ぐらいか過ぎたあたり………もしかしたら同年代?などと勝手にアタリをつけていたのにまさか。
ひとまわりも年下様とは思いも寄らなかった。
ツナは愛想笑いを強くした。
「ウ、ウ―――ウェイトレスの子、美人だったろ?お前に気があったみたいでさ………だからはやくゥゥ!」
「冗談。あんな化粧臭い女抱けるかよ」
言いながら肩に、腕の付け根辺りに唇を押しつける。仕事帰りのよれたシャツじゃどうにもなんない………そんな予想は裏切られる。
「うわあっ、あっ、ああっ」
素早くファスナーを下ろして入り込んだ素手が、ぐしぐしと勢い付いて握り込む。
あっという間に抗議の声はみっともない喘ぎになって、ツナはシンクの縁にしがみついて耐えた。
「あうッ………ぐ…」
瞬く間に先走りを滲ませたそれを、コロネロはぬちぬちと音が立つほど擦り立てていく。放出の手前で一度止め、わざわざ明かりの下に手をかざした。
「すっかり抜けたか。良かったなコラ」
「よっ………よくな………い」
こんな目に遭うなら同じだ。
ツナの脳裏に帰国して数日の地獄が蘇った。男の愛撫を欲して疼く体と、出し切らない残り蜜を垂れ流す性器。
こればかりは医師に相談するわけにもいかず、一人でなんとか収めた、のに。
「もっとよくしてやる」
手の平をべろりと舐め、ぎょっとしているツナを担ぎ上げて部屋へ戻る。
「変態っつった癖に!」
「俺はいーんだよ」
そんなわけはないのだが、コロネロは聞かない。寝台へ乱暴へ放り出されてすぐ起きあがろうとしたが、結局ツナは逃げ出せなかった。踏んでいる場数が違うのだ。
「うるせえなあ」
抵抗する腕を抑え、ひとくくりにしてしまったコロネロはそのままベッド縁に縛り付けてしまった。
両腕の自由が利かないツナはせめて足で暴れたが、腿をぴしゃりとやられて止める。そうでなくても―――男が顔を伏せて自分の性器を口に含む現場を見てしまえば、驚きとショックのあまり動けなくなった。
「な、な、なぁ―――ッ!」
ジュル、と音を立てて啜り上げる吸飲に、舌先で舐られる刺激にぬるま湯のような心地よい快感が下肢に広がっていく。逆らえず、首を振ってはぁ、と息を吐いた。
「いぃ、やぁ―――」
ちゅぷちゅぷと口中で遊ばれていたかと思うと、急にキツく吸い上げられる。
振り回されてひくつく喉に、生ぬるい唾が絡んだ。思わず咳き込む。
「腰上げろ。こっちも弄ってやる」
「い…ひぃ…!」
脳天直撃の低い声が下肢にこもる。思わず浮かせた腰をぐっと掴んだ手と、違う手が隙間に入り込む。
「痛ぁ!」
「狭い、な」
乱暴に突き入れられた一本で既に限界だった。冷や汗が出る。
「あれだけしてやったのに。なァ」
「知らな、いっ…」
はねつけてしまえればいいのに。
思う心とは裏腹に、まるで望んでいるように腰を突き出し、待つ。穴を穿つ指を受け入れようとし、意志に反して其処は緊張を解いた。
身体の方が意識よりずっと馴染んでいるのだ。やがて、あっさりと訪れた限界は驚くほど大量の精液を吐き出して終わった。ジンジンと痺れる性器を持て余し、荒い息を吐いてぐたりと身を横たえているツナの口元に指が這った。
見ると、既に身を起こし、覆い被さったまま目線を据えている男が居た。
「あ……」
たまらなく恥ずかしい。
知らない土地でなく、知っている自分の部屋で明るい中で。おかしくなってしまいそうだ。
顔を真っ赤にして背け、足を擦りあわせて勃起した性器を隠そうとするツナをコロネロは不思議そうに見ていた。彼にしてみれば、あれだけ媚態を晒して平気だったこの男が今更羞恥を感じる必要が分からない。
分からないが、一つだけ確かなのは。
「入れるぞ」
それが彼をそそったという事実だけだ。低い声が掠れて耳元に落ちた。
その小さな耳を柔く咬んで、舌を穴に滑り込ませながら切っ先をあてがう。抱えた足の裏、内股の白さが目をやいた。一気に根本まで埋め込む。
「ああ―――ッ!」
決して少なくない痛みに仰け反った背を支え、そっと寝台に落としてから押しつける。
ぐう、とうめきの出た口を口で塞ぎ、口元や顎を舐め回して獣のように腰を振りたてる。主の不在で冷えていた部屋の温度が、今は丁度良かった。
「あ、あ、あ」
ガクガクとぶれる顎は、感じる感覚が痛みだけでないことを伝えていた。舌を噛まないよう、コロネロが手や腕を差し入れてやると小さな歯の感触が食い込んでくる。
「ガキくせえ」
クスリと笑って彼は男の目を覗き込んだ。快感と羞恥に潤んだ瞳が揺れ、閉じられて涙がこぼれる。
目ぇ、あけろ。
その意味で目尻や瞼も舐めてやる。しょっぱい味が広がった。
甘いものは匂いを嗅ぐのも嫌な気分だ。これでよかった。
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