平行世界

 

ツナはもう居ても立っても居られず、退院したいと言いに行った。
担当医はああそれはあなた様が望むのでしたらハイどうぞ!とやたら這い蹲って送り出してくれた。なんだかえらく態度が違う。

「あの………ええと………鞄持ちましょう…か?」
「ありがとう」
「いっ………いえ………」
相変わらずへこへこしている暗い獄寺を連れ、とりあえず綱吉は学校へ行くことにした。

「あ」
タクシーから降りたツナが校庭を見ると、丁度野球部が練習をしていた。
ひときわ背が高く、頭の突き出ている後ろ姿は見覚えがある。山本だった。
「やまも………」
声をかけかけたツナは、またも驚く羽目になった。

「やだ〜、山本エロいー」
「最悪ぅー」
「なんだよ、男はみんなそーなのー」
へらへらとやる気のない素振りを繰り返しながら、山本武は女子二人を引きつれての練習中だった。
「ちょっと真面目にやんなよぉ」
「ほら他の部員みんな見てるよー?」
「いーのいーの。どーせ万年補欠だし、俺女にモテたくて野球部入ってんだもーん」
「やだサイテー!あははっ」

「なにあれ………」

ツナが青い顔で口元を押さえると、獄寺がぼそぼそと言った。
「山本君は女の子に人気があるから………しょうがないですよね」
「山本君?!いや、それよかアレ、おかしくない?!?」
脇を過ぎる他の運動部員達が、こそこそと話していくのが聞こえる。
「山本超ウゼー」
「練習に女連れてきてんじゃねーよ!」

ツナ的に山本はクラスのヒーローで、優しくて男らしくて野球一筋で、つまり男の子の理想型みたいな存在だったのに!

「あ、沢田じゃん」
その山本が気付いて、大きく手を振った。
「なに退院したの?怪我はもういいのかよ」
「う、ううん………」
「隣町の中学の奴等、ぶちのめしたときのだろ?鉄パイプで殴られたってマジか?」
「マジっすか!!」


2006.4.15 up


next

文章top