「心当たりがありました」
「―――は?」
唐突な言葉。意味がわからない。思わず聞き返してしまう。
ツナはすっかり忘れ去っていた。彼が特別忘れっぽいのもそうだし、あれから3ヶ月程経っていたし、とりあえず就寝前のハミガキをしている真っ最中だ。しかも先日の誕生日、プレゼントに貰ったパジャマという格好である。
突然やってきた上に意味不明の言葉をぶつぶつ呟く相手に、あいづちは適当極まった。
「ゴメン、なんの話?」
「大事な話なんでしょ」
ふてくされたような面持ちでポケットに手を突っ込み、斜めに立っているランボ。あ、シャツがよれてる。
ツナは立ち上がり、腕をまわして裾を突っ込んだ。
「わっ」
「ちゃんと入れなよもう…だらしないなあ」
「あんた、俺の母親ですか」
「似たようなもんだよな」
にっこりツナが笑ってやると、ランボはふいと視線を逸らした。
「反抗期?」
「違います」
「心当たりってなんだよー」
ぱっぱと服の埃を払ってやりながら話の先を促してやる。
子供の世話をしている母親のように、確かにその様子は甲斐甲斐しい。
「俺の女癖の悪さ、その原因について」
「おお、わかったのか!偉いぞランボよく思い出したなあ」
「そうですねえ」
「それで?なんだって?」
「あんたです」
「ン?」
「だから、あんたですってば」
「…ン??」
「あんただー!!!」
耳元で怒鳴られ、ツナは目をぱちぱちさせる。
ランボはイライラと足を踏み鳴らした。
「ボンゴレ10代目、他ならぬあんたが俺の人生を狂わせた」

「冗談だよな」
笑おうとしたツナは失敗した。ランボの表情はシリアス真剣そのもので、とてもふざけているようには見えない。
「なんのお話になってるの?」
「小さくていたいけな俺の初恋を、つい先日思い出したんです」
「ちいさくていたいけ」
「その人はあんまり身近だったもので、すっかり俺のものだと思い込んでた。けど違った。だから俺は…大層傷ついてですね」
「誰?」
「あんたです」
「冗談だよな!?」
ツナはじりじりと後ろに下がったが、下がったぶんだけランボは前進してくるのだった。
「幼心にもショックでした。多分恋とも分かってなかったんでしょう。けどそこから―――自然と距離を置こうとして俺は女に声をかけたんだそれが始まり」
「どんな発想の飛躍だ!」
もちろん悪い冗談。
もしくは勘違い!ランボおまえバカだから!
結構酷いことを考えたが、ツナは何も言えないでいた。口にものが入っていたからだ。
不意打ちで舌まで突っ込まれ、ツナは慌ててその場から飛びのいた。
「なにしやがる!」
「責任とってくださいよっ!」
「バカ!バカだろおまえ!こっちくんなー!」
逃げ惑う、まさにその表現がぴったりの慌てっぷりで所狭しと部屋を駆け回る。ツナを、ランボは一々追い掛け回した。
最終的に寝室の角まで追い詰めて、じりじり距離を狭めていく。
「だってそうじゃないですか。俺は手酷く弾かれた。奴らに相手にすらされない!」
「落ち着けぇーランボォー?れーせーに考えろー…」
「知らないでしょ?スモーキン・ボムやあの侍、リボーンまで…あなたの側に行こうとする人間をことごとく排除する!だから俺なんて入り込む隙すら無かったんだからっ…あきらめようと思っ…」
「なん…話……ランボ?おい」
「女漁りすれば叱られるしっ…うえっ…ど、ど、どう、すればっ」
「そりゃ叱るだろ!だっておまえまだ子供なんだぞ!」
「うわぁぁぁ―――ん!」
とうとう泣き出してしまったランボを相手に、ツナはおろおろと手を振った。
これなのだ。
泣き虫が始まってしまうと、どうしようもない。
「また子供扱いするっ…」
「泣くなよー、ほら飴玉やるから」
「わぁぁぁっ、うえっ、うっ…」
「ブドウ味好きだろ?なあ、泣き止めって」
「ツナのバカ―――ァ!うんこ―――!」
「おま、うんこはないだろうんこは。16にもなって大人気ない」
「さっき子供って言ったくせに―――!!」
「だって子供じゃんか」
「おえァオんぃウェー!」
「なに言ってんのかわかんないよ!もーどーしろってーの…」
お手上げ。
ツナにしてはオーバーアクション気味に上げられた両腕が、ふらふらと空中をさまよった。
「つ…っぅ、つ…」
「つ?」
「付き合って…ください…」
―――アホか。
ツナは思わず泣いている相手の頭を思いっきりはたいた。べしっといい音がした。
「うわぁぁーっ」

2005.10.24 up


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