STAR DUST
「どうするって、取るしかねーだろーがコラ」
「あっ………なんかそれはちょっ………」
申しわけなさすぎるとずりずり後退る子供の顔にはでかでかと「嫌だ」と書いてあった。
「俺も嫌だ」
「でしょーっ………?」
「でも仕方ねえ」
コロネロは指揮官である。
指揮官というのは思いきりが大事だ。弾で腹を抉られた部下の手術もすれば、異星のジャングル戦で兵の化膿した足をぶった切って焼き鏝をあてた事もある。
それに比べれば体内から異物を取り除くぐらいどうってことない。傷つける可能性は(そっとやれば)少ないのだし、心理的にアレなものがあっても処置と割り切れば可能だろう。
「観念しろ」
「ギャーッ!!」
子供は今まで以上に暴れ出した。思ったより、力が強い。
「クソ、この、大人しくしやがれコラ!」
「いーやーだー!」
しかしどんなに暴れても、軍で鍛えたコロネロには敵わない。
小柄な体はあっというまに技で固められ、じたばたもできなくなってしまった。
あと残るのは口だけである。
「君、君ねえ、冷静に考えてみたまえ!仮にも連合に加盟している地球人ともあろうものが………」
「黙ってねえと、小っせえケツが裂けるぜ」
「………っ」
小難しい話し方に違和感を覚えつつ、コロネロは完全に技師か医者の気持ちでぬるぬるする腿を掴んだ。女じゃなければ"濡れる"訳はないのだから、これは多分潤滑剤なのだろう。
「ひっ」
尻や足に伝うそれを指ですくい、ぬりたくって進める。
言ったとおり小さなソコは、猛烈な痒みのせいでひくついて、簡単に飲み込んだ。
最初こそヒーヒー言っていたが辛かったのだろう、指が中に潜っていく程に大人しくなる。
ん、うん、と一生懸命息を飲み込んで、耐えている。
あんまり大人しくなったので心配して顔を覗き込むと、ぎゅっと目を瞑ったまま唇を噛みしめていた。
「するなら早くしろ…!」
「つってもなァ」
指を半分突っ込んでも、まだ届かない。
一番長い中指に代えても、届かない。
「うっ………く、」
苦しげに呻くのを待て待てと宥めてとうとう二本纏めて突っ込んで、
「あった」
指先に、ほんの少しだけ触れた。
熱い粘膜の奥の奥、男色の経験のない此方としてはエッこんな中まで入っちまうのか?!と純粋に驚いてしまう程奥に中指を突っ込み、少しずつ掻き出すようにして取り出す。
丁度、中で僅かにぷくりと膨らんだ所にひっかかり、少し手間取った。
「ひっ…う!」
「でけェ声出すなよ…」
幾ら医者の気持ちになっていても、流石にしがみつかれ耳元に熱い息を吹きかけられると、それはそれで困る。
気を逸らすため軽口を叩く。
「しかし、ンな恐ろしげなモン使って大丈夫なのかよ此処の女は?」
「んーっ…」
「男の方も………つまり突っ込む訳だろーが。うー、想像したくねえ」
「んんんーっ」
「俺はこういうのは趣味じゃねえな………っと」
指先に白っぽい、小さな塊があった。
「取れたぜ」
ぐるんと世界が反転した。
コロネロはまた、この盛大な処置に感謝を示しての抱擁かと思った。勢い良く、大男の彼を押し倒した子供はどこかぼーっとした顔で言った。
「………ごめん」
「はァ?」
目が爛々と輝いている。
茶色だったそれは、今は金にも白にも見えた。ゆらゆらと揺れるままに色を変え、口元が歪む。
歪んだ笑みは美しく見えた。
「助けてくれた人にこういうお願いするのもなんだけど、頼む」
「おい?」
「一生のお願い」
「お?」
「ヤラせろ」
………
………
………
「なんだとおっ?!?」
「駄目だもう辛抱ならんっ」
抱く!と宣言したかと思うと、子供は凄い力でコロネロを押し倒し直した。
「アホか―――っ」
ぱっかーんと頭を叩いても、まるでゾンビのように起きあがってくる。
ギリギリと力を込めて指が腕に食いこみ、人ならぬ形相がすぐ間近に迫っている。
「お、前―――…」
「繁殖期、来ちゃったん、だ。クランの女だと、潰しちゃうかも………っ」
「だからって俺に走るなコラァ!!!」
「いいじゃんあんたなら大丈夫だ!」
丈夫そうだし!と言われてコロネロは本気で抵抗を始めた。
冗談じゃない。
何が悲しくてこんな異星くんだりまで来てガキに犯されなきゃならんのだ。
「お前、地球人じゃねえなっ!この、バカ力がっ………」
「ああもうほんとごめん、ごめんね?でも今は緊急事態だしこの星脱出した暁にゃーたっぷり慰謝料払ってやるからっ………頼むから大人しくしてーっ」
「るせーっ」
むぎぎぎぎ。
歯を食いしばってコロネロが押し返す。
要するに、目を見なければいい。
催眠効果のある双眼が瞬きもせずに見つめている。コロネロの頭のファイルが一瞬で引き出され、必要な情報をピックアップし脳内デスクに提出する。
彼等は地球人が最初に接触した異星種族である。(多分)
その出会いは"アンジェラス"と言われている。
出会ったのが神父故に聖母マリアの受胎告知になぞらえられたのだ。また、その異星種族の容姿や宇宙船からの光輪を帯びた姿が天使に見えた事も原因だろう。
種族の正式な名前は地球上のどの発音にも適さないため、通称にもなっている。
実際彼等は天使めいた存在だった。
彼等はどちらかというと精神体に重きをおき、肉体を離れて飛び回る事が出来る。寿命も人間とは比べものにならない程長く、全てにおいて他種族と一線を画した存在だった。
反面、非常に人間とよく似た利己的な考え方をし、その寿命や肉体的制約の無さから大分のんきで気の長い一面はあるものの、おおよそ人類とは兄弟と言って良いのではというくらい精神構造が近い。
傲慢、嫉妬、怒り、怠惰、強欲、暴食等キリスト教の七つの大罪のうち6つは確実にある。
残る1つ、色欲だけは―――
これは長い彼等の歴史の中でも用心深く隠されている事項なので、一地球人であるコロネロが知るわけはないのだが、今の状況から察するに各実にあるようだ。
2006.5.17 up
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