STAR DUST
辺境の星で何年も苦労してきた、その境遇には同情する。
しかし男に押し倒されているとなれば、話は別である。コロネロは憤怒の形相で、襲ってくる子供を巴投げの要領でぶん投げた。
「ケチー!」
「そんな問題かコラァァァ!?」
こうしてみれば幼い容姿も身の上話も全面嘘だ。アンジェラス達は人間より遙か長い寿命を持ち、成長も極端に遅い。
「いっ、いい、じゃないっ………繁殖期、辛いんだぞっ………死んじゃう、俺死んじゃうかも………」
「死ね」
目を潤ませて訴える相手を、コロネロは冷たく見下ろした。
「酷いっ」
「いきなり襲ってくんのは酷くねぇってのか?」
「熱いっ………あづ………あうっ、あうぅっ………」
がくん。
それまで憎まれ口を叩いていた体が、膝から崩れ落ちた。
転がって悶えて苦しそうだ。
「酷いっ………地球人なんて、ずっとずーっと繁殖期じゃんかっ………だから辛い、の、分かんないんだろっ………」
「………」
確かに年がら年中繁殖期の発情期の人間は、それだけ性欲をコントロール出来る。
他種族のように繁殖期が決まっていると、その効果はとりわけ強いのだから。
「俺達の、は、お前達の時間で言えば、30年に一回くらいしかないんだっ…」
30年分だぞ。
辛いんだぞ。
切々と訴えられる。
「ああ、あう、痛いようっ………熱いようっ………!」
「チッ………」
コロネロは渋々腰を下ろした。
「わあいっ」
場違いに明るい笑顔を浮かべて子供が、アンジェラスが、飛びついてくる。
「………」
仏頂面で睨み付ける大男にも、少しも臆することなく。
「ありがとっもうほんと、恩に着ます。なんも心配しないでね、後のことはどーんと任せてっ」
彼等はその高い能力故に地球人とは比べものにならないくらい財産持ちだ。
「ん…ん…」
火照った頬を押しつけて、首や鎖骨の辺りにチュウチュウと吸い付いている。
どうやらアンジェラス達の交わりも、地球人のそれと変わりないようだ。
どっちかっていうと、性交渉というよりは子供が母親の乳にしゃぶりつくような、無垢な様子である。とろん、とした目が妖しい光り方をするのでなければ。
むっすーとしたままあぐらをかき、腕を組んでこれっぽっちも協力体制でなくだんまりばかりのコロネロに、アンジェラスは熱心に求愛の愛撫を続けている。
頬や額を擦りつけたり、唇同士を触れ合わせたり、しかしまるで子供の戯れだ。
そんなことを繰り返しているうち、コロネロは一つの結論に至った。
つまり、このアンジェラスの行動や話し方、様子から言って、慣れているとは言い難い。
こいつはこれが初めての繁殖期なのではないだろうか。
もしくは、まともな経験がない。
「………おい」
「んぁ…?」
がくんと音が鳴りそうな程に頭を揺らす。
「俺で用が足りるってンならお前達のは、受精させて終了、って訳じゃねえのか」
「そんなことしてたら人口爆発する………」
「つまりこの状態が収まりゃいいんだろ?」
「ん………」
完全にラリったような顔つきで、それでもかくかくと頷いている。
コロネロはふむふむと頷いて、
「………んあ?」
転がした。
粗末な衣類の裾を上げて、ぬるついた竿を掴む。びくん、と跳ねた体を押さえながら口を開き、べろりと先端を舐め上げた。
「こっちでやりゃイイ話だ」
「んゥ………!」
慣れている訳はない。
単純に、された行為を繰り返しているだけだ。出来るだけ歯が当たらないよう、舌と、柔らかい咥内でだけ愛撫する。
むくむくと膨らむ性器は地球人とそう変わらない。
もう、異星人の繁殖期をどうにかする事態では、男性体だのと気にしていられるのでもなく。
ツツ、と態と尖った歯を滑らせると、細い体が身悶えた。
人のそれと違い、匂いや味は殆ど無い。
この分だと血も味が薄そうだ―――などと馬鹿馬鹿しい思考に至ったところで、抑えていた腰がびくんびくんと跳ねた。暴れた。
ふーっ…ふーっ…
夢見るような目つきで視線を空中に彷徨わせ、ゆらゆらと頭を揺らしている。
抱き上げて座らせると、ぴったり体をくっつけて、膝立ちで緩慢に腰を振る。獣だ。獣の交尾に似ている。
同じか。
媚態と言うにはあまりに稚拙な本能の姿に、プッツンと自制の糸が切れた。
「まだ足りない」
「………ん」
「もっと欲しいんだろ?」
「んんーっ…」
「いいものやろうか。なあ」
「………ン、ぁ」
かくん、と頷いた。
それが合図だ。こっそりくつろげていた前を、足を割り広げ、支え手の力を抜く。
「ふぐっ…」
添えているだけの右手で巧みに誘導し、まだぬるついたソコにあてがえば、位置が合いきらない内に勝手に腰を落としていく。
本能だ。
獣の、人の、生きていて、交わりを持てる全ての生き物に備わる本能。
「うー………」
い、ぃぃ、た、ぁ……
ぬるついてひくついて熱い。目を閉じれば、女と思えぬ事もない。
しかし目を開ければ、その方がもっと興奮した。白く仰け反った喉に、細い顎、ぱくぱくと息を吐き出す小さな口、ちょんと尖った鼻。うっすらと光りを帯びた双眼。
元々線が細く、中性的な容姿を持つアンジェラス達はいとも簡単に地球人達の、異種族に対する最初の性欲対象となった。
しかし、彼等と交わりを持った話は聞かない。
天使の一族にそんな下等な欲求があるかどうか、今まで誰も聞かなかったからだ。
そして彼等もまた注意深く口を噤んできたからだ………
種族として、またこの存在の、初めて(かもしれない)の交わり。
その考えは、戦闘意外では余り作動せず、普段は彼の奥底に眠っている征服欲を呼び覚ました。
こうなれば、後は敵が完全沈黙するまで徹底攻勢である。
「よしよし………」
あのおぞましい薬根の効果も続いている。
じわじわと熱くなる粘膜同士を擦り合わせる事だけに集中し、突く。擦り、振り立てる。痒みが襲ってくる。熱い。気持ちいい。確かに、癖になる。
二度とはごめんだが―――
寝台がどろどろになるまで交わって、明け方に二人は倒れ込んだ。
泥のような眠りが意識を攫うまで、そう時間はかからなかった。
2006.5.18 up
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