ディーノさんと里帰りする話
「ツナ!」
走って寄ってきたディーノは、座っている少年を見るなりはっとした顔をして。
次の瞬間にはくしゃりと破顔した。
「なんだよリボーン、来てたのか」
「テメーのアホ面拝みに来た訳じゃねえぞ」
帽子を胸に置き、足を組んで座る少年の格好は、年齢から言えば滑稽だ。
例えばツナが、同じくらいの年頃にやったら、それは大層可笑しい眺めになっただろうし、容姿の整ったディーノでさえ可愛らしいという程度のものだろう。
しかし彼は違った。そうすることがとても似合っている、というかそうするのが当たり前のような気すらしてくる。不思議な少年だった。
「それで。本土放っといて、向こうの仕事は終わったのか?」
「いやそれがまだ………」
「テメエ………」
キリキリと目をつり上げる、表情が一変して恐ろしげになる。
ディーノの隣のツナの方が震え上がった。
そんな状態でよりによってチラリと視線を寄越されたからたまらない。
ひきーんと凍り付いてしまったツナは丁度二人の真ん中辺りに立っていたのだが、少年が立ち上がってゆっくりした足取りで近づいてくると………
「………」
「………なんで下がる」
だって怖いんだものー!
本能的恐怖で後退るツナに、少年は気分を害したようである。
ディーノへの不機嫌がそのままツナへ移行して、これは何かの試練かと思うほど怖い。
少年はしばらくガタガタ震える18歳をじろじろと眺め回していたが、やがて視線をディーノに戻して、ハッ。
また鼻で笑った。
「テメー、趣味全然変わってねーな。相変わらず地味好みか」
「なっ…おい、リボーン!」
慌てたディーノが止める。
しかし言われたツナ当人は、「あ、やっぱそーなんだ」と腑に落ちただけで特にショックは受けていない。自分が地味な事などとうの昔に思い知っている。
「そうだろうが。大体、何処が『清楚で可憐なで花の似合う大和撫子』なんだこれ」
「えっ………それは………どこからどう見てもそうだろ?」
ポッと頬を染めたディーノの間違った視線を、ツナはやっぱり青ざめた顔で迎えた。
そんな似合わない、というか見当はずれの褒め言葉をきっと多分本当に信じてるからすごい。
花が似合う大和撫子って、ナニ?
ディーノさん、乱視?極度の?
「確かに俺花屋だけど。そーゆー意味なんじゃない?」
「ほお」
「違う!ツナはムグ」
「もーいいですから」
必死に言い募るディーノの口をツナは伸び上がって塞いだ。これ以上耐えられなかった。
そんな様子を少年は嘲笑って眺めていたが、やがて斜めに、小首を傾げて(これ、すんげえかわいらしい!とツナは思った)言った。
「まあ確かに………花は似合ってたぜ」
ニッと笑う表情は完全に大人の物で、台詞と相まってツナは少しドキリとした。
流石イタリア男である。こんな幼少期からこんな台詞を言って様になるのだから末恐ろしい。
「それにソソらないわけでもないね」
「はっ?!」
な、なんて台詞を言うんだこの子は?!
ツナはぎょっとして目を剥いたが、続く台詞は彼をそれ以上あっけにとらせる物だった。
「ディーノで満足してんのか?ん?コイツ、一人で先走ってねーか。俺とも試してみるか」
「リボーンッッッ!!!」
ボンッと音が出るほど真っ赤になったツナへ、少年はごく自然な動きで近づいて手を伸ばし、
「うわあ!」
尻を撫で回し始めた。ディーノはカンカンだし、ツナはカクカクと角張った動きで払いのけることもできやしない。喋ることも。
「ンだよ。こーゆーのは人の自由だろうが」
「冗談じゃねえ止めてくれ!」
「死ぬほどいい目見させてやるぜ………?」
スルスルと尻の辺りをまさぐっていた小さな手が、ごく自然な動きでツナのジーンズの腰へ潜った。
丁度尾てい骨辺りに指の感触がしたかと思うと、小さな爪の先で軽くなぞられて、
「あぅッン……!」
途端下半身や背骨を伝って走った痺れに、妙な声が出た。うわあはずかしいぃぃ!!思う間もなく、ガクンと膝が折れてその場へへたり込む。
「おー、感度良好」
「ふっ………ざけんなよ!」
ふっ………ざけんな、よ。
いや、俺がさ。
こんな小さな子にちょっと触られたぐらいで腰砕けてる俺ってナニよ。
「あ、あの俺大丈夫ですから」
最初の衝撃から立ち直って顔を上げたツナは、鬼のような形相で何故か懐からロングウィップを取り出し、少年に打ちかかっているディーノを見て仰天した。
「久しぶりに稽古つけてやるか」
が、平然とそれを受け流し、懐からずらりと細身の投げナイフを取り出した少年もまた驚きである。
というか………
「物騒だよー!」
折角の薔薇のあずまやが見る見る間に鞭とナイフの餌食になっていく。
「幾らお前でもそれだけは許さねえ!!」
「ああそうかい。で?どうするって?」
「うわああああ!!」
叫び声は主にツナのものだ。
少年はナイフを投げ終わると、懐から銃を出したのである。そりゃ叫ぶってものだろう。
2006.3.6 up
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