みかん

 

 寒くなってきた。
 風が冷たくなって、通りではコート姿を良く見かける。店先に並ぶ品物も冬仕様になって、居間にはこたつがやってきた。
「………」
「………」
 にぎやかな音はテレビのみ。
 四角いこたつは入る所が四面あるにもかかわらず、テレビの真っ正面だからという理由でツナは旦那の膝上に陣取っている。肩まですっぽり入り、リクライニング機能(旦那の腹筋頼み)のついた万能椅子に腰掛けて黙々と………
「………うぉぉい」
 旦那の長い指がこたつ板の上でみかんの皮を剥く。
 しかしスジを取り、さあ口に入れる段階になると、ツナがぱくりとやってしまう。
「………」
 一心にもぐもぐした後、ツナはちらりと旦那を見たが、特に何も言わない。
 ハア、とため息を吐いた後、スクアーロはもう一度みかんを取り、剥き始めた。
 今度は食べたいので、少し急いで剥く。スジを取る手つきも些か乱暴だが、それでも丹念に取るのは性格だろう。綺麗なみかんが食べたいのだ。
 ところが、
「う゛ぉぉい!!こらぁ!」
 折角綺麗に剥いたみかんの房を、またもツナがぱくりとやった。
「ンまーい」
「ンまーい、じゃねえよ!」
 思いの外我慢強いスクアーロ。
 またまたみかんのスジを丁寧に、素早く取り始める。が………
「いでえっ!!」
 普段はぼーっとしているくせに、こういう時だけ敏感に気配を察したツナはまだ剥き終わらないうちにみかんを食べた。急いだ旦那の指を更に急いでぱくついたので、勢いあまって指まで囓ったのだ。
 もぐもぐもぐもぐ。
「ゲッ、ゲホッ!ケホケホッ!」
「むせんなよ!オレの食っといてよ!つーか、いい!分かった!分かったぜえ」

 食ってもいい。
 せめて綺麗に剥かせてくれ、イライラすると訴える旦那に対し鷹揚に頷いたツナは、きれいなみかんをたらふく食べて大満足だった。





(その後:ある日の買い物)

「あぁ?あまぐり?」
「食べたい」
「そんなもんお前、剥いたやつ買ってきゃいいじゃねーか………ってもう入れんのかよ!オレの話全然聞いてねえだろぉ………」
「剥いて食べるのが美味しいんだって」
「でなんでオレを見………あっ!てめえ!まさかまたオレに剥かせようってんじゃ」
「………」


※大当たりです。


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