12月24日の災難
―――広い。
広すぎる。一体何畳………いや何平方メートルあるのか………
正に城!というような屋敷でツナは迷っていた。完璧に、迷子だった。右を見ても左を見ても最早もと来た道など皆目分からない。
クリスマス、しかもイブ。ほぼ無理矢理強引にベルから招待されたツナは住所を書いたメモを見ながらえっちらおっちらやってきて、その門構えに呆然とした。キロ単位で続く石畳、何重にもなっている門、広すぎる庭。奥にやっと屋敷らしい、しかもホテル並にでかい建物が見える。
これが家………「オレん家」か。レベルが違いすぎるな。
引き返したくなる衝動を抑え、ツナは邸内に足を踏み入れた。前日に「あーオレん家ね、セキュリティガチガチだからさ、このバングルしてきて。じゃないと家入る前にレーザー照射されるから」と言われ、無理矢理はめられた腕輪をしっかと握りしめて。
というか、此処は本当に日本なのだろうか。
無事建物に辿り着いたとて、出迎えが来るワケでもない。ただドアは腕輪に反応してがちゃりと鍵を開けた。ツナはすいません、ごめんくださいとビクビクドアを開けたが、やっぱり中にも人の気配はなかった。
がらんと広い廊下。玄関に表札も無かったから、本当に此処がベルの家なのかどうかも分からない。まあ鍵が開くのだからと中へ進み、まず階段を上がった―――なんとなく上に居そうだったからだ。それと、万が一地下室なんぞに入って暗かったり怖かったり出られなくなったりするのはイヤだから。
人気のない廊下を延々歩き、見つけた階段を上る。そんな行為を繰り返しているうちにツナは本当に迷ってしまっていた。西洋風の装飾も、床のタイルの幾何学的な模様も永遠に続くように思え、心理的な圧迫感から急激に疲労を感じた。階段の踊り場でとうとう腰を下ろし、膝を揃え―――ぼんやりと肘をついた。
急ではないが続く段を見ていると、幾らのんきなツナでもたまらない不安を感じ始めていた。そんな事はないのだが、『出られなかったらどうしよう』なんて事も考えてしまう。
どうしよう。
→ 誰か通りかかるのを待とう。
→ とにかく進むしかないだろう。
2006.12.9 up
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